この記事は
「組織にボトムアップを取り入れたい」
「ボトムアップにはどんな効果があるのか知りたい」
と言う方に参考になるはずです。
僕の母校の高校サッカー部を例に説明していきます。
僕の母校のサッカー部は毎年ベスト8止まりくらいでした。しかし、ボトムアップ式の指導法に変えた3年後、決勝戦まで進むことができたんです。
惜しくも決勝戦で敗れはしたものの、ボトムアップ式の効果が目に見えるように出た結果です。
ここではその経験から
- ボトムアップが高校の部活にどのように取り入れられたのか
- ボトムアップで僕ら生徒に起こった変化
- ボトムアップを活かすためにはどうしたらいいのか
ボトムアップの取り入れ方、組織へ与える変化を知りたい人へ向けて、実際の経験を基に書いていきます。
ボトムアップとは
ボトムアップは英語で書くと「bottom up」bottom=底、up=上がる
直訳すると「底が上がる」となります。
ボトムアップという言葉は、ソフトウエア工学を始め、ビジネス、組織論など幅広い分野で使われていますが、今回は組織の管理方式から見た「ボトムアップ」を取り上げます。
引用:コトバンク
ボトムアップを取り入れる目的は、組織の「底」を上げることで、全体としてのレベルを上げようとするものです。
ボトムアップとトップダウンの違い
ここではボトムアップを説明する上で、欠かせない「トップダウン」との違いを説明します。
サッカー部の例を基にします。
トップダウン
通常、部活の指導法には「トップダウン」が用いられることが多いです。
僕の高校も以前はトップダウン式を取っていました。
トップダウンでは、部活のトップ(監督・コーチ)が選手に「指示」を出して運営していきます。トップダウンでは、絶対的な立場が存在するので、基本的に選手たちはその「指示」にしたがって練習し、活動していきます。
トップダウンのメリット
・選手は「指示」に従えば良く、考えなくていいので楽
・監督、コーチ(組織のトップ)が意図する方向に進めやすい
・部活(組織)全体の意思決定が早い
トップダウンのデメリット
・ただこなすだけの練習になってしまう
・選手が試合で感じた自分たちに本当に必要な練習ができない
・指示によって「やらされてる感」が発生する
ボトムアップ
ボトムアップ式では、監督・コーチは選手に助言などのアドバイスを送る立場になります。
基本的な運営(メンバー決定・練習内容など)は選手たち自ら考え実行します。
そこでもしズレた方向に向かっていたら監督が修正するという方式です。選手たちは修正案も「指示」ではなく「アドバイス」として受け取ります。
ボトムアップのメリット
・「この練習では、課題Aを改善できるはず」などと仮説を立てて実行することでPDCAが回しやすくなる
・自主性が生まれ、一人ひとりの意識が高くなる
・「やらされてる感」がなくなる
・自分たちで考えた結果、うまくいった時の達成感が増す
ボトムアップのデメリット
・選手はサボろうと思えばいくらでもサボれる
・監督、コーチの意見が反映しずらい
・慣れるまで時間がかかる
・意思決定が遅くなる
ボトムアップを高校の部活にこう取り入れた
ボトムアップは会社経営で応用されることが多いですが、その方式はどのようにして高校のサッカー部に取り入れられたのか。選手と監督の立場それぞれの役割を取り上げて説明していきます。
監督の役割
- ボトムアップ式の取り入れ方を学び、選手が適応できるように導く
- 選手が迷っている的確なタイミングを見て助言する
- 運営のズレを修正する
- 指示をしない
- 練習や試合など、環境の確保
選手の役割
- 自分たちに足りない部分を把握し、解決する練習メニューを考える
- お互いの調子を見て試合のメンバーを決める
- 試合中プレーしている選手がメンバー交代を行う
- 遅刻などの罰は自分たちで決める
選手に意思決定の権限を与えると、組織のトップである監督・コーチの役割が減ると思いきや、むしろ少し高度になり増えている印象もあります。
選手たちは考えなければいけないことが増えるので、練習をこなしていくだけではありません。
練習試合を基に自分たちの弱みを把握し、どんな練習で改善されるのかミーティングします。練習全体の時間配分、どのくらいの強度の負荷が必要なのか。目標を達成するためにやらなければいけないことは尽きません。
やはり取り入れ始めたころは、選手もどうして良いかわからない状況でした。
いきなり「今日からボトムアップでやるから」と言われても絶対不可能です。
ボトムアップとは何か?から入り、取り入れることでなにが改善され、どう良い方向へ進むのかの提示が必要です。
何を目標としてやっていくのか、まずは目標の全体像をチーム(組織)全員が把握しなければいけません。
それができなければボトム(底)を上げていくことは難しいです。
サッカー部では、まず選手たちに近いキャプテンに伝え、そこから広げていくというやり方でした。
選手の役割である意思決定も、キャプテンが中心となって意見をまとめていきます。
役割として形だけ選手に任せることは簡単ですが、それを機能させていくとなると、選手一人ひとりが、目的と方法の両方を理解する必要があります。
初めは目的と方法、そして目的達成のためになぜその方法がいいのか説明していくことが重要です。
ボトムアップを取り入れたことで起こった変化
サッカー部としてボトムアップを取り入れたのは、僕らの1つ上の先輩の代からでした。
その代から練習メニューを選手たちで決め、試合中での交代、戦術も選手同士で出しあいました。
そして3年後、僕らの1つ下の代が決勝戦まで駒を進めました。結果としての変化は3年後わかりやすい形となって現れました。
ただ、いきなり大きな変化が訪れたわけではありません。
結果が出るまでの間も、選手の中には確実に少しづつ変化していたものがあります。
それの変化とは、選手一人ひとりがチームとして考えられるようになったことです。
チームとして考えるとはどういうことかというと、選手が自分を客観的に判断し、チームの目標達成のために何ができるのか、何をしなければいけないのかを考えられるようになったということです。
トップダウン組織の場合、各メンバーはトップから良い評価を受けることが目的になってしまいます。自分が評価されるためであれば、仮に組織の目標から遠ざかる行動であったとしても実行してしまう。これは個人として考えているからです。
しかしボトムアップ式では、各メンバーが個人として評価される必要がなくなります。なぜならトップから個人を評価してもらってもほとんど意味がないからです。
サッカー部の例で言うと、監督にはメンバー決定の権限がないので、試合中に監督だけにアピールできるプレーをしても無駄ということです。
そのプレーが実際試合に出てる他の選手の助けになる、あるいはチームのためになることでなければ意味ないのです。なので自然とチームとして考えられるようになります。
試合中どこかを痛めた場合、本来であれば少し無理をして監督に対してのアピールを続けたいところですが、チームとして考えることができれば状態の良い選手と自ら交代をするという選択ができます。
ボトムアップでは、その意思決定への弊害が少ないと言えます。
ボトムアップを取り入れるべき組織とは
ここまでサッカー部が取り入れたボトムアップについて解説してきました。
ここで言いたいのはボトムアップがフィットする組織、そうでない組織が存在するということです。
ボトムアップはメリットがある反面、デメリットも存在します。
その両方を考えたとき、もしデメリットがメリットよりも痛手になる可能性がある場合は取り入れないほうが良いでしょう。
もう一度確認すると、ボトムアップにはこのようなデメリットがあります。
- メンバー同士サボることが容易にできてしまう
- 意思決定が遅くなる
- トップの意思を反映しずらい
- ボトムアップの適応までに時間がかかる
目標の全体での共有や、それぞれにある程度高い目標達成の意識がないと、メンバーたちはただ楽な方向へと向かっていきます。
こうなるとボトムを上げるどころか、さらに下がってしまうので逆効果です。
全体の目標達成への意識がある程度高く、その目標を達成するために今のままではいけないと思っている。このように、なにか変えなければと思っている組織であればボトムアップはフィットします。
全体の意識が低いのであればまずは、違った目標設定でメンバーの意識を改善することが必要です。
この記事がボトムアップの一つの事例として参考になればと思います。
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